雄半数性ハチ類の性決定および性配分機構について研究し、以下の結果を得た。 1. カブラハバチでは、1回交尾雌による一次性配分には規則性が見られ、産卵開始後1〜3日目では雌比は著しく高く(100〜70%)、4〜6日目には顕著に低下し(60〜20%)、7日目以降は受精卵である雌卵を産むことなく(0%)、すべて未受精卵であった。親雌はダイコンの葉を鋸状の産卵管で切り裂き、一旦静止(産卵前時間)した後、切り裂いた葉の組織内に産卵するが、産卵前時間は受精卵を産む時の方が、未受精卵を産む時に比べて顕著に長く、不受精卵産下の場合に、より時間を費やしていることが明かとなった。多回交尾する本種では、精子置換による精子競争がみられ、常に後から交尾した雄の精子が受精に使われていることを明らかにした。すなわち、後から交尾した雄はペニス先端の小突起を使って、先に交尾した雄の精子を雌の受精のうから掻き出し、その後自分の精子を送り込むことをつきとめた。 2. アカスジチュウレンジバチの性決定は、2遺伝子座上の性複対立因子によって決まることを明らかにした。すなわち、2遺伝子座上の因子の一方でもヘテロの場合は雌に、共にホモの場合および半数体で因子がヘミの場合は雄になる。バラの新梢内に卵塊産卵する本種の性配分には、雌雄産下にリズムが見られることを明らかにした。雄卵はほぼ等間隔で雌卵と雌卵の間に挿入される形で産下され、常に一定の性比を確保する仕組みを獲得している。 3. マイマイヒラタヒメバチの性決定は、カブラハバチと同様に1遺伝子座上の性複対立因子によって決まることを明らかにした。2倍体雄の生存力は半数体雄のそれと変わらず、成虫の形態も半数体雄と区別できない。
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