研究概要 |
トビイロウンカの成虫には,長翅型と短翅型の二型があり,翅型発現は主に幼虫時の密度によって制御される.本研究では,100世代近くの翅型選抜によって得られた広範囲の生息密度で極めて高率に一方の翅型を発現する系統を用いて,発育の特定時期に幼若ホルモン,あるいは幼若ホルモンの拮抗体であるプレコセンを局所施用したときの諸形質への影響を調べることから,翅型発現の内分泌制御機構の解明を試みた. 長翅型系統では,3齢期から4齢中期までの幼若ホルモン処理により短翅型が誘起され,その時期へのプレコセン処理は早熟変態を誘起した.一方,両者を同時に処理すると,そうした短翅型と早熟変態誘起は抑制された. 短翅型系統では,2齢期へのプレコセン処理により早熟変態と長翅型発現が誘起され,それらへの幼若ホルモン同時処理により,そうした効果は減少あるいは消失した.3齢初期にもプレコセンによる早熟変態と長翅型発現の誘起は生じたが,その後の処理では,まず早熟変態が,次いで長翅型発現が誘起されなくなり,4齢期への処理では効果が全く認められなかった. このように,2系統間での幼若ホルモンと抗幼若ホルモン処理に対する感受性には明らかな相違があることが判明した.これらの結果から,4齢後期での高い幼若ホルモン濃度によって短翅型が,低い濃度によって長翅型が誘起されること,短翅型系統では4齢期での幼若ホルモン濃度が高く,プレコセン処理によってもレベルが閾値以下に低下できないため,早熟変態と長翅型発現の誘起が起きないものと推定された.
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