研究概要 |
本年度は、細菌病抵抗性トランスジェニック植物の創製に向けての基礎的研究を行った。 (A)毒素耐性遺伝子の探索とクローニング:トランスポゾン導入で毒素生産性を失活させたイネもみ枯細菌病菌に毒素合成回復遺伝子を導入した変異株を用いて毒素トキソフラビンを精製し,イネもみ枯細菌病菌自体のゲノムDNAから本毒素に対する耐性遺伝子の探索を試みたが,耐性遺伝子を得ることはできなかった.そこで,日本全国1,000ヶ所より収集した土壌から本毒素の分解微生物を探索し結果,有望と思われる3菌株を得ることができたので,現在これらの菌株より毒素分解遺伝子をクローニング中である.また,イネもみ枯細菌病菌の毒素合成能欠損変異株を相補する回復遺伝子を基にトキソフラビン生合成に関与する一つの遺伝子を同定することに成功した.今後,本毒素生合成関与する全遺伝子を解析し,毒素不活性化生合成遺伝子の探索を行う予定である. (B)タバコ野火病菌のグルタミン合成酵素遺伝子の解析:タバコ野火病菌より毒素の標的酵素であるグルタミン合成酵素遺伝子を単離・同定することができたので、現在この遺伝子をタバコ葉緑体のRuBiSCoのトランジットペプチド遺伝子とPCR法により融合し,植物発現ベクターを構築中である. (C)植物への遺伝子導入法及び植物体再生技術の確立:イネ,エンバク,シバなどのイネ科植物を中心に病害抵抗性植物の創製に向けて効率の良い植物体再生技術の確立、およびこれら植物のエレクトロポレーションあるいはパーテイクル・ガンを用いた効率的な直接遺伝子導入技術の確立を目指して検討を進めている。
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