研究概要 |
本年度は,カイコのW染色体に関する分子生物学的情報を得るために,ランダム増幅多型DNA(RAPD)の探索と,そのDNA塩基配列の決定,ならびにゲノムライブラリーの作製を行った。結果の概要は以下の通りである。 1.カイコのW染色体に存在するRAPDの探索を行ったところ,既に発見されていた2種類のRAPDに加え,新たに2種類のRAPDを得ることができた。 2.合計4種類発見されたW染色体上のRAPDのDNA塩基配列を決定した。これらの配列は,データベース上の検索から,各種レトロウイルスのゲノム,あるいはレトロトランスポゾンとの相同性が認められるレトロトランスポゾン様配列であった。これらの配列データをもとに,W染色体上のレトロトランスポゾン様配列の転移機構について推察した。4種類中3種類のレトロトランスポゾン様配列は,過去に転移したものが,そのままゲノムの中にとどまっており,現在では転移機能を失っていると不活性型と考えられた。しかし残り1種類のレトロトランスポゾン様配列は,胚発生の特定の時期にmRNAに転写されており,活性型である可能性が示唆された。 3.カイコの雌のDNAを用い,ラムダファージによるゲノムライブラリーを作製した。そのライブラリー中よりW染色体上のRAPDを含むファージを1種類クローニングした。そのファージの挿入断片(約16Kbp)中のDNA塩基配列を途中まで解析した結果,複数のレトロトランスポゾンが含まれていた。現在,残りのDNA塩基配列を決定中である。
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