研究概要 |
交配系クロス5307を用いて,イネ品種X59に対する交配後代の病原性検定を行った.これまでに29株の解析が終了し,非病原性と病原性の比は21:8となった. クロス5307は,予備実験の結果精密な遺伝子地図の作成に不適であると判断された.そこで,変異株による非病原性遺伝子へのアプローチを試みることにした.まず,変異株の取得を試みた.クロス5307の親株2107-33を接種試験したところ,大多数の抵抗性病斑の中に,変異によるものと考えられる感受性病斑が現れた.それらの病斑から12の変異候補株を単離した,これまでにこのうち4株の病原性を検定したが,いずれも親株と同じ病原性であった. 変異株からのアプローチでは,迅速な変異部位の特定が必要である.そこで,AFLP法で既存の病原性変異株間のDNAの多型の検出を試みた.Inal68r95-1(レース101)とIna168m95-1(レース103)の2菌株の間で,81種のプライマーの組み合わせで多型バンドの検索を行ったところ,4種の多型バンドを得た.よって,AFLP法により,変異部位の検索が可能であると考えられた. 一方,JBLA-K04に属する圃場分離株115株の核型をパルスフィールドゲル電気泳動法により解析したところ,47種の核型に分類された.各核型は4〜7本の染色体バンドにより構成され,このうち,13種,13種,25種の菌株が属する3種の優占的な核型が現れた.代表的な菌桐7株を用いてrDNA遺伝子(Leongらの染色体地図では第2染色体に座乗)をプローブとしたハイブリダイゼーションを行ったところ,rDNAは全て5.7Mb以上の染色体にハイブリダイズし,rDNAの座乗する染色体長の著しい多型は検出されなかった.従って,いもち病菌においては,酵母等で報告されているrDNAの染色体再編成への関与は無いと考えられた.
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