研究概要 |
脱窒光合成細菌Rhodobacter sphaeroides f.s.denitrificansは嫌気的明条件下でジメチルスルフォキシド(DMSO)を末端電子受容体としてDMSO呼吸により生育可能である。DMSO呼吸系の末端酵素DMSO reductase(DMSOR)の塩基配列およびX線結晶構造解析が行われ、構造とDMSO還元の機構が俄然注目を集めるに至った。しかしDMSO呼吸は新規な呼吸系であるため、DMSORへの電子供与体をはじめとする呼吸系全体の解析が未知の状態にあり、そこで本研究はこの新規呼吸系を解析することを目的とした。 遺伝子解析によりDMSOR遺伝子(dms A)の上流域を検索したところ、2つのORFの存在が明らかになり、これらがオペロンを形成していることが分かった。この2つのORF(dms B,dms C)のうち、dms Bは低分子膜タンパク、dms Cはヘム分子5個を含む分子量45,000の膜タンパク(cytochromeと思われる)に対応する遺伝子であることが分かった。dms ABCは、大腸菌のtorオペロンと高い相同性を示すことから、dms Cの示す45Kdのタンパク(Dms C)がDMSORへの直接電子供与体であると推察した。一方、Rhodobacter sphaeroidesからDms Cを単離することを試み、cytochrome cタイプのhemeを含むことが分かったが、存在量が少なく単離するに至らなかった。そこで別途遺伝子解析で得られたdms ABCを様々なバリエーションで大腸菌に組み込み大量発現を試みた。その結果、dmsA,dmsB,dmsC,dmsBC,dms ABC大腸菌で発現することに成功したが、すべて細胞内インクルージョンボディとして活性のないかたちで発現し、またヘムcを含んでいなかった。DmsC→DmsAの電子伝達活性を示すためにDmsCの菌体からの大量調製を行ったが、精製は困難を究めたが、どうにか単一にまで精製することができた。ただし、in vitroの再構成実験では電子伝達活性を再現できなかったことから、さらに活性に共役する第三の因子の存在も含めて更なる検討が必要であることが分かった。
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