麹菌(A.oryzae)は、わが国で清酒、味噌、醤油などの製造に古くから利用されている産業上重要なカビであり、多量に酵素を分泌生産する能力を有する。本研究では、麹菌細胞内の蛋白質分泌機構を分子レベルで解析することにより、高蛋白質分泌能の解明を目的とする。 1 麹菌の遺伝子ライブラリーの作成の一環として、RT-PCRによるヌクレアーゼS1遺伝子をコードするcDNAのクローニングを行い、この方法が麹菌でも有効であることを確認した。 2 より効率的な麹菌の形質転換システムの開発として、マイクロインジェクションによる効率的な形質転換法の開発のために種々検討を行った。ツニカマイシン処理により、通常の細胞の数十倍の大きさの細胞を形成させることは成功したが、マイクロインジェクションによる効率的なDNAの注入の条件を設定することはできなかった。 3 分泌関連遺伝子のクローニングとして、小胞体に存在し、分泌蛋白質のフォールディングに重要な働きをしているプロテインジスルフィドイソメラーゼ遺伝子を麹菌からクローニングし、その塩基配列を決定した。また、麹菌α-グルコシダーゼ遺伝子のプロモーター配列の誘導機構を調べるために、α-アミラーゼとグルコアミラーゼ遺伝子のプロモーター配列との比較および、プロモーター配列の欠失変異によりその誘導機構の詳細な解析を行った。
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