研究概要 |
Saccharomyces cerevisiaeのカタラーゼ欠損株(ctal△,cttl△,ctal△/cttl△)を構築し、過酸化水素に対する耐性・適応能について検討した。また、大腸菌やヒト赤血球との比較検討を行い、適応機構と進化の関係について考察を加えた。さらに酸化的ストレス適応機構において重要な坑酸化酵素であると考えられるgltathione peroxidase(GPx)について解析を行った。これまで、微生物はシトクロムcペロキシダーゼを持ことからGPxを持たないと考えられてきたが、本申請者らは酵母Hansenula mrakiiがGPxを持つことを既に報告し、今回本酵素遺伝子のクローニングを試みた。その結果、PGL1遺伝子を単離し解析を行った。さらにS.cerevisiaeについてもゲノムデータベースの解析により3つのGBxホモログ(YKL026c,YBR244w,YIR037w)遺伝子について破壊株を構築ストレス適応応答での役割と発現制御機構について解析を進めた。また酸化的ストレス適応応答における、坑酸化性物質グルタチオンの再還元系の生理的意義を種々の遺伝子破壊株を用いて検討し、原核細胞の大腸菌、下等真核生物である酵母、及び哺乳類の三者の間でストレス応答における役割に相違があることを明らかにした。また、細胞内グルタチオン含量の制御に関与するOSR1/ZRC1遺伝子の発現制御機構の解析を行った。OSR1/ZRC1遺伝子の発現は金属制御条件下で誘導され、その誘導には亜鉛代謝にかかわる転写因子Zaplpの影響下にあることを明らかにした。過酸化脂質についても、Snyder-library法を用いてtert-butyl hydroperoxideによって発現誘導される遺伝子のスクリーニングを行い、2-deoxyglucose-6-phosphate phosphataseをコードするDOG2遺伝子が過酸化脂質応答性であることを明らかにした。この遺伝子は過酸化脂質以外にもグルコース飢餓や浸透圧ストレスによっても誘導され、その発現はHOG-MAP kinase cascadeにより制御されることを解明した。また、グルタチオン合成系の鍵酵素glutathione synthetaseをコードするGSH2遺伝子を同定した。
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