研究概要 |
イチョウの正常種子、正常葉、「オハツキ」種子、を経時的に採取し、その成長過程における形態、組織観察を行った。「オハツキ」種子はイチョウの葉の一部が肥大し、種子様の組織が形成されたものであるが、デンプンや多糖の染色、組織学的な観察から、受精前の正常な種子と大きさ以外に明瞭な差異は認められず、単為結果に相当する組織であると考えられた。これらの内生ホルモンの分析と、それらの内生量の経時的変化を追跡した。ジベレリンとしては、イムノアッセイにより正常葉、正常種子、「オハツキ」種子からGA1,GA3,GA4,GA5,GA9,GA20が検出された。これらのジベレリンの内生量の経時変化を追跡したところ、いずれのジベレリンも極めて低いレベルであったが、GA3が精子分化が始まると考えられる9月初期に、約100pmo1/gfwと一時的に高い値を示すことが明らかになった。ジベレリンと性の表現や受精には多くの植物において密接な関係が認められており、イチョウにおいてもジベレリンが受精過程で重要な働きをしている可能性が示された。一方、4月下旬に開葯前の葯を採取し、次亜塩素酸ソーダによる殺菌を行った後、無菌的に開葯させ、無菌状態の花粉を採取し、無菌培養し、精子分化誘導物質の検定系の確立を試みた。MS液体培地を入れた24穴プレートで培養することにより、花粉管の伸長を確認出来た。しかし、培養過程でバクテリアや糸状菌の混入が避け難く精子の分化が認められるような状態にまで培養を続けることは困難であった。また、雌花や正常種子の抽出物を加えて検定を試みたが、活性を検出できていない。
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