1)植物根圏域における有機化合物の吸収 これまでにほとんど研究例がない植物の根での物質の吸収・変換・代謝に関するモデル実験系を確立した。根圏土壌から単離した150菌株の培養液に、播種後2週間後のイネの根を浸漬、培養した後、浸漬液のTLC分析を行った結果、放線菌9001株の培養液中に特異的にイネの根から選択的に吸収される物質を見いだした。選択的に吸収される化合物を単離精製し、構造決定したところ、2-aminobenzamideであることが判明した。 2)2-aminobenzamideの植物体内の変換・蓄積 上記1)の方法で2-aminobenzamideを吸収させたイネ植物体のMeOH抽出物をTLC分析したところ、高極性の蛍光を発する新たなスポットが認められた。植物組織より変換物を抽出、精製したところ、2-aminobenzamideはN-グリコサイドに変換さていることが示唆された。各種機器分析により当該化合物は2-aminobenzamideはN-グリコサイドであることが示唆された。今回、2-aminobenzamideが選択的に吸収され、N-グリコサイドに変換されたが、2-aminobenzamideに対応するカルボン酸(アントラニル酸)は家畜等に対する催乳活性があることからビタミンLとして知られている。また、アントラニル酸のピルビン酸アミドは抗オーキシン活性を有し、フォスフォリボシルアントラニル酸はトリプトファンの重要な生合成中間体であり、植物成長ホルモンであるインドール酢酸の生合成には不可欠である。このように植物代謝における鍵化合物が選択的に吸収・変換されたことは、非常に興味深い。
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