インスリン様成長因子I(以下IGF-I)は、インスリンと構造および作用が類似しているペプチドホルモンであるが、食餌条件に対する応答から判断して、タンパク質代謝においてはインスリンとは全く異なる機能を果たしている可能性が大きいことを筆者らは多くの観察から証明してきた。また、IGF-Iに特異的に結合するタンパク質であるIGF結合タンパク質(以下IGFBP)は、現在7種類が知られ、それぞれ特有の様式でIGF-Iの作用を調節していると考えられている。本毛入では、IGF-Iが実際にin vivoでどのような作用をしているのか、またIGFBPはどのような作用をしているのかを明らかにする目的で、タンパク質代謝状態の異なる数種の実験動物について、血漿中のIGF-I濃度(IGFBPとの結合を解離させて測定する総濃度測定法による)、およびIGFBP-1濃度を測定した。 動物の条件は、タンパク質を給与しない無タンパク質区、ストレプロゾトシンを投与して糖尿病にした動物、グルココルチコイドを投与した動物、とした。骨格筋のタンパク質合成活性の指標としてRNA/タンパク質比(R/P)を採用した。その結果、血漿中のIGF-Iは、グルココルチコイド投与区を除いて、R/Pとよく相関した。一方、IGFBP-1濃度はいずれも例外なく骨格筋のR/Pとよく相関した。この結果は、IGF-Iの濃度は、タンパク質合成に極めて重要であるが、その活性を調節すると考えられているIGFBP-1の濃度の方がより直接的にタンパク質合成に関与していることを示している。その他の測定結果もいずれもこの判断を支持していた。本研究により、タンパク質代謝、特に骨格筋のタンパク質合成活性の制御因子が明確に把握された。
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