本年度は、植物体より香気前駆体となる可能性を持つ配糖体の分離を中心に行った。さらに香気生成の機構について、茶生葉より調整した粗酵素を用い、合成した各種配糖体に対する特異性を調べた。 1)茶生葉、サンショウ生葉、ショウガ根茎を、メタノール抽出後、各種クロマトグラフィーにより、配糖体画分を分離し最終的に高速液体クロマトグラフィーにより各配糖体を精製した。 2)粗配糖体画分を、市販のクリコシダーゼで加水分解したところ、主要香気成分と同一の化合物が生成する事を、ガスクロマトグラフィー-質量分析法により確かめた。これにより、香気成分が配糖体アグリコンとして生体中に蓄えられていることが明らかとなった。 3)茶生葉よりアセトンパウダーを調整し、これを粗酵素系として各種配糖体の糖部分に対する特異性を調べた。グルコース、キシロース、アラビノース、プリメベロース、ビシアノースの1-p-nitrophenyl配糖体を合成し、酵素活性を測定したところ、プリメベロシドに対する活性が最も高く、茶葉中に同配糖体が多種存在することの意義が、説明できた。 茶香気の主要成分であるベンジルアルコール、フェニルアルコール、リナロール、ゲラニオールのプリメベロシドを合成し、上記の粗酵素系で加水分解を行ったところ、ゲラニオールついでリナロールの生成が高かった。生葉中の配糖体存在比と異なり酵素の作用をうけて形成される紅茶香気中に、モノテルペンアルコール類が多く存在する機構が説明できた。
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