高度不飽和脂肪酸および抗酸化成分の抗体産生調節機能の解明においては、不飽和脂肪酸がラットリンパ球のIgE産生を促進し、IgAおよびIgG産生を抑制することにより、I型アレルギーを促進する可能性を示した。このIgE産生促進効果は不飽和脂肪酸の二重結合数の増加とともに強くなること、脂溶性抗酸化剤の共存により発現が抑制されることから、脂質過酸化反応が関与することが示唆された。 一方、二重結合を3個以上有する高度不飽和脂肪酸はラット腹腔内細胞のLTB_4放出抑制を通じてI型アレルギー応答を抑制することが明らかとなった。この抑制効果は二重結合数の増加とともに強くなり、ロイコトリエン産生の基質とはなりえないドコサヘキサエン酸が最も強い抑制効果を示したことから、脂肪酸自身の作用に基づくことが推察された。 同様なLTB_4放出抑制効果は、α-トコフェロール、茶ポリフェノール、フラボノイドなどのフェノール性抗酸化成分にも認められ、LTB_4放出抑制効果の発現がリポキシゲナーゼ反応の阻害に基づく可能性が示された。茶ポリフェノールはヒスタミン放出抑制効果も示し、この抑制効果はトリフェノール基を有する化合物に強く認められたが、LTB_4放出抑制効果は抗酸化活性の強いジフェノール化合物にも認められ、両活性の発現機構が異なることが示唆された。また、カルボキシル基を有するポリフェノール化合物はLTB_4放出抑制効果を示さなかったことから、化合物の細胞膜透過性が活性発現に重要であることが示唆された。 これらの結果は、高度不飽和脂肪酸および抗酸化成分がメディエーター放出の抑制を通じてI型アレルギーを抑制する可能性を示している。しかし、高度不飽和脂肪酸はIgE産生の促進を通じてアレルギー応答を促進する可能性も見出され、その利用に当たっては抗酸化剤の併用が必要であることが示唆された。
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