瀬戸市上水道の日単位給水量(平成4年度から平成9年度まで)の記録を分析した。瀬戸市の上水は、大きく分けて「自水」という自己水源と「県水」という愛知用水による木曽川水系の水からなっている。平成6年の渇水は、自水給水量の半減があり、県水の充当を仰ぐも、全給水量が不足するという図式で示される。なかでも、渇水の後期(9月)は、自己水が降雨により増大した状況で発生していることが理解された。また、渇水後長らく上水道給水量が低い水準で推移しており、木曽川水系の貯水量の回復が遅れたこと、節水の習慣がその後も長く維持されていることが推察された。愛知演習林の量水観測資料から森林の回復過程に対応して、流量が増大していることが明らかにされている。通常の森林水文試験の報告(例えば森林伐採により流量が増大する)と反する結論であり、その解釈を試みた。森林の育成が、水資源にとってプラスになりうることがある事例として強調されるべきである。 自水の給水能力増強(実現すれば渇水は長期化しなかったと期待される。)の可能性については(1)空間的には新しい自己水源の開発のため十分な余地が残されているものの、(2)都市近郊林は廃棄物処分場に安易に利用される実態があり、廃棄物処分場と水源域における水質汚染産業の立地関係から、新たな水源確保には十分な検討が要求される。 また、瀬戸市山間部集落における水利用に関するアンケート調査を実施し、(1)現在の水利用実態(2)平成6年東海渇水時の状態(3)市行政に対する要望などの項目について調べ、一方、木曽川源流山村の集落調査として、ダムを契機に急激な過疎化が進行した王滝村のT集落について同様の聞き取り調査を行った。
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