研究概要 |
接着系に外力を加えると応用集中が生じるので、いわゆる接着強さは物理的によく定義された量とは言えない。一応、破壊力学においては材料内部に応力を集中させ、破壊の進展に伴うエネルギーの散逸を評価する試験が行なわれており、歪エネルギー解放率は材料靭性を表わすものとして物理的に定義されている。本研究は接着系に各種の接着剤を適用して、木材接着試験片を作成し、その接着強さを規格に準じた方法によって測定するとともに、接着系に破壊力学的測定法をも適用して、それから破壊力学的パラメータ(モードI,II,IIIに対する歪エネルギー解放率G_<IC>,G_<IIC>,G_<IIIC>)を評価した。また、これらの値と接着強さとの間の相関関係について検討するとともに、その相関関係に及ぼす接着剤の粘弾性の影響についても議論した。今年度はとくに、接着剤として、Epikote828とEpikote871とを種々の割合で混合し、これを共通の硬化剤(DETA)で硬化する系を採用した。この系か両主剤の混合比を変化することによって室温でガラス状態からゴム状態まで変化する一連のポリマーを作ることができる。結論を要約すると、引張り接着強さとモードIのG_<IC>の平方根との相関関係については接着剤の物性により3つの領域で特徴的な挙動がみられることがわかった。(1)接着剤がガラス状態のときは両者に正の相関関係がみられる。(2)接着剤がゴム状態のときは曲線的な相関関係がみられる。(3)転移域においては有意な相関関係がみられない。
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