1.遠心力によるウォーターポテンシャルの低下とメニスカスによるウォーターポテンシャルの低下の釣り合いから、湿潤状態の針葉樹材6種の心材の透過径分布を求め樹種特性を明らかにした。早材と晩材ではいずれの樹種でも早材の方が大きな透過径を示した。乾燥材では晩材の方が透過性が良いという報告があり、湿潤材と乾燥材に差があった。 2.スギ材の黒心材と赤心材では明らかに黒心材の方が透過径が小さく、黒心材の乾燥が悪いことを木材組織学的に明らかにした。 3.遠心力場で壁孔に破壊が見られた。心材より辺材の方が破壊しやすく、この理由として壁孔縁とトールスの付着の強さが考えられた。またスギとベイマツでは、明らかにベイマツの方が破壊が少ない。SEMでの観察の結果トールスと壁孔口の大きさの比がベイマツの方が大きく、トールスの壁孔縁での支持機能が大きいことを明らかにした。 4.遠心力の程度によって破壊の程度が異なり、遠心力の大きさから壁孔の破壊に要する力を求めると、スギの辺材で0.1から0.2MPaであった。心材では数倍大きな値であった。これから判断すると、壁孔は乾燥時に発生する毛管張力で破壊することが十分考えられた。 5.透過径に及ぼす乾燥方法の影響を調べたところ、高周波減圧乾燥法で乾燥した木材の通気性は熱気乾燥で乾燥したそれより良好で、透過性が良いことが分かった。しかしベイマツのような心材含水率が低くほとんど自由水がない場合には乾燥法により差がない。これは高周波減圧乾燥法においては、材内部の水分移動が蒸気で行われることを表している。
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