研究概要 |
本研究では、世界的にも最大の生産力を有する西部北太平洋亜寒帯循環域と亜寒帯移行領域を対象海域として、亜寒帯循環の中長期変化が生態系の主要種(鍵種)の資源変動に及ぼす影響を検出することを目的としている。平成9年度には、1979年より継続している北大練習船「おしょろ丸」と「北星丸」による夏季のモニターライン(北緯35-約50度,東経155度,170度,175.5度,180度)の海洋観測と生物測定データ(無選択性調査用流網による採集標本の計測資料)を実施し、本研究のための継続データのデータベース化に追加し、解析を継続中である。今年度に新たに得られた成果は、次の通りである。 (1)亜寒帯海流系に関して、アリューシャン列島に沿った深層(水深3000m)に、西向きの流れが存在することが明らかとなった。現在、流量計測を継続中である。(2)西部亜寒帯海流(東向流)の強勢部に経年変動が存在し、一方アラスカンストリームでは、1990年と1997年に西向流量が増大した。(3)180度線における夏季の表層性イカ類・魚類群集の分布と海況の経年変化(1979-1995)の解析から、92年以降の移行領域の北偏に伴って、シマガツオの減少とギンザケの増大が確認された。また、95年以降には、移行領域の拡大が生じている。(4)夏季の亜寒帯海域におけるシロサケの分布と成長変異を規定する要因の抽出を行った。その結果、近年のシロサケ資源の増加に伴う小型化は、特に3歳の海洋生活期に顕著であることが抽出された。現在、これに関わる環境要因の検出を行っている。(5)サンマの生活史を1年から2年の寿命に設定して、資源変動モデルを作成した。
|