研究概要 |
今年度は主に3つの実験を行った.第一に,イトゴカイがAutotrophicに生育が可能なことを示すため,有機物を添加せずに硫化ナトリウムの存在下での飼育を試みた.その結果コントロールと比較して有為に高い生育が得られ,独立栄養共生細菌の存在が強く示唆された.第二に,イトゴカイの共生細菌の存在を探るため,イトゴカイをつぶしてその体内の細菌の培養,分離を試みた.この結果,初期段階での細菌の増殖が確認されたが,継代培養がまだうまくいかず,今後の課題として残された.一方,細菌由来の16SrRNA遺伝子を直接抽出,増幅して検出する試みも併せて行っている.第三に,イトゴカイの飼育環境における微生物の動態を探るため,泥およびその上の水中の微生物の量と群集構造を追跡した.泥中の菌は必ずしも明りょうな変化を示さなかったが,イトゴカイの存在下では水中の菌数に減少がみられ,イトゴカイが水中の菌やデトライタスを捕食している可能性が指摘された.
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