以下の項目について、ウナギ接岸回遊機構の解明に取り組み、次のような成果を得た。 1.日齢査定と回遊履歴の推定:(1)東アジアに接岸するシラスウナギの日齢はおよそ143-206日齢で、低緯度ほど、若齢・高成長率のものが加入することが明らかになった。(2)またEPMAにより、耳石中のSr濃度を調べたところ、レプトケファルスからシラスウナギへ変態が始まるのは約130日齢(80〜160日齢)で、約30日間(20〜40日間)かけて判定を終了することがわかった。 2.mtDNAによる解析:(1)16SrRNA遺伝子領域の500bpの塩基配列を比較することで世界に分布するウナギ属魚類全18種・亜種の分類を行うことができるようになった。また、これを用いて、形態では識別できなかったウナギの卵やレプトケファルスの査定が可能となった。(2)茨城県、神奈川県、鹿児島県(種子島)に接岸したシラスウナギ合計47体の調節領域601bpの塩基配列を基に集団解析を行ったところ、これらのウナギはすべて同一の繁殖集団に属することが明らかとなった。また、これまでに報告されている台湾、韓国、中国のウナギの塩基配列も合わせて解析してみても遺伝的変異は少なく、東アジア一帯に生息するウナギは、単一の繁殖集団から成ることが示された。このことから、本種の資源管理を行う場合、その分布域の東アジア全域の国々が協調し、国際的な規模でこれにあたる必要があると考えられた。
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