研究分担者 |
西田 睦 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (90136896)
新井 修亮 京都大学, 農学部, 助手 (20252497)
木下 泉 京都大学, 農学部, 助手 (60225000)
青海 忠久 京都大学, 農学部, 助手 (10144338)
豊原 治彦 京都大学, 農学部, 助手 (90183079)
中坊 徹次 京都大学, 農学部, 助教授 (20164270)
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研究概要 |
1994年4〜8月に日本海全域(鹿児島南部から北海道石狩湾)において直接採取したヒラメ稚魚1800個体について背鰭の鰭条数を詳しく調べた結果,両鰭条数には顕著な地理的変異がみられ,北海道を除き北に少なく南に多い傾向が確認された.一方,クローンヒラメを用いた飼育実験により,卵・仔魚期の飼育水温と鰭条数の間には正の相関が認められた.天然仔魚は,北の海域ほど高水温期に出現するため,鰭条数の地理的変異は,個体発生初期における環境水温の影響によるものではなく,遺伝的背景を持つことが示唆された.しかし,太平洋岸の1地点を含む日本列島周辺の8地点より得たヒラメのmtDNA(D-loop領域)の塩基配列は,北海道でやや異質な傾向が認められた以外には明確な地方集団の存在を裏付けるような傾向は示さなかった. 日本海におけるヒラメ稚魚の密度は北部と南部で大きく異なり,成育場における潜在的捕食者と考えられるエビジャコの密度や稚魚の所要餌料であるアミ類の季節的個体群動態には南と北の海域で顕著な差が認められた.再生産の単位を考える上で不可欠の産卵情報については,PCR法を用いた卵の同定が可能になり,若狭湾西部海域において3月下旬より9月上旬にかけて浮遊性魚卵の採集を行った結果,5月中旬を盛期とするヒラメ卵の出現動向が初めて明らかにされた.また,SEMによる精度の高いふ化日及び着底日の推定が可能になり,従来飼育実験より予測されていたよりかなり浮遊期が短いことや若狭湾に出現する仔魚のふ化日と当海域の卵の出現に顕著なずれがあり,山陰西部あるいは九州西部よりの仔魚の輸送が推定された.
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