ゴンズイとchannel catfishを中心として、三叉神経線維の顔面葉への投射、顔面葉からの出力細胞の同定と分布、顔面葉からの上行性と下行性の第二次味覚中枢への投射様式、触鬚における味蕾と神経線維の分布を神経解剖学的に調べ、以下の結果をえた。 1、ゴンズイ、channel catfish、ヒラメ、ホウライヒメジ、カワハギ、ベラ、コイ、キンギョで三叉神経の顔面葉へ投射をDiI法を用いて調べ、すべての魚種で三叉神経線維は三叉神経脊髄下行路を経て顔面葉へ直接投射することが判明した。特に、顔面葉に体全体の鋭い体性機能地図を持つゴンズイとchannel catfishでは三叉神経線維の投射が顕著であり、胴体部を表わす部分を除いたすべての部分にその分布が見られた。このことは三叉神経も顔面神経線維と同様顔面葉に局在投射をし、体性機能地図作りに貢献していることを直接証明する。 2、ゴンズイの顔面葉には大型で棘をもつ樹状突起を有する細胞(L-1)、大型で滑らかな樹状突起を持つ細胞(L-2)、小型の細胞(S)が存在する。このうち顔面葉からの出力細胞は大型の細胞であることが判明した。上行性第二次味覚中枢に線維を送る細胞は小葉の至るところに散在し、下行性第二次味覚中枢に線維を送る細胞は数では大変少なく各小葉の周辺に存在する。 3、ゴンズイの顔面葉から上行性第二次味覚中枢には局在投射はなく、下行性第二次味覚中枢では局在投射が見られた。また、顔面葉から延髄網様体への投射が見られた。 4、ゴンスイとchannel catfishの触鬚では味蕾は一様に分布するのではなく、吻側に最も多く、次に尾側に見られ、中間領域には少なかった。神経線維は少なかった。神経線維は表皮直下に網目上で分布し、味蕾の分布密度の高いところではこの網目が小さくなることが分かった。
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