研究概要 |
平成8年度は両側回遊魚のリュウキュウアユとユゴイを中心に研究を行った。まずリュウキュウアユの生態学的研究により、以下の結果を得た。 1)放流後の成長と生残:沖縄本島北部の源河川に1996年5月24日〜6月30日に18,000尾のリュウキュウアユを放流した。放流時の体長は約6cm、産卵期には約11cmに成長した。この間の生残率は約11%であった。 2)産卵期と流下仔魚:産卵は12月上旬に始まり、1月下旬に終了した。この間の流下仔魚数は約80万尾と推定された。 3)海域での分散と遡上:源河川で生まれたリュウキュウアユ仔稚魚の多くは羽地内海で成育し、羽地内海を中心とする7河川に遡上していることが明らかになった。 次にユゴイについての形態学的、生理学的研究によって以下の結果を得た。 1)生殖年周期:沖縄本島北部の7河川から採集した固体の生殖腺体指数(GSI)は、4月から10月まで、ばらつきは大きいが平均で2%以上の高い値を示し、11月以降は1%前後に下がった。雌雄の生殖腺の組織学的観察から、本種の産卵期は4月から10月まで続き、この間複数回の産卵を行うものと推定された。また雌は隊長9.5cm〜11.1cm、体重21〜31gで成魚となり、多年産卵を行うことが示唆された。生殖年周期に伴う血中Caイオン濃度を測定した結果、GSI値の変化とよく一致した推移を示した。 海水適応:11月及び12月に河川で採集したユゴイを約3時間で全海水に移し、血中Na及びClイオン濃度野変化を調べた。Naイオンは淡水中での154mM/l前後から24時間後に約214mM/lまで上昇し、その後7日目まで200mM/lの高い値を保った。ClイオンもNaイオンと同様の変化を示し、本種が海水に対して強い耐性を持つことが示唆された。 以上のモデル魚種による研究と並行して、島嶼の川と海を回遊する魚類の実体を知るべく西表島、浦内川河口で定期採集を継続中である。
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