研究概要 |
イコサペンタエン酸(20 : 5, E)あるいはドコサヘキサエン酸(22 : 6, )とパルミチン酸(16 : 0, P)を組み合わせたトリグリセリド(EEE, EEP, EPE, EPP, PEP, DDD, PDP, PPD)を化学合成した。20 : 5については、16 : 0以外にもステアリン酸(18 : 0)、オレイン酸(18 : 1)、リノール酸(18 : 2)などの飽和および不飽和脂肪酸と組み合わせたトリグリセリドも合成した。 合成トリグリセリドを1)無溶剤バルク、2)ベンゼン溶液、3)緩衝液分散系の各系において、酸素吸収速度または児童酸化時の酸化誘導期の長さから酸化安定剤を判定した。 その結果、保存形態は酸化安定性の順序にはほとんど影響せず、トリグリセリドの酸化安定剤は主としてトリグリセリド1分子中に存在する高度不飽和脂肪酸のモル数のい依存した。すなわち、20 : 5含有トリグリセドにおいては、安定剤に高いものからEPP>EPP>EEEの順になった。高度不飽和脂肪酸が1分子中に2モル存在する場合には、高度不飽和脂肪酸が隣接しないものが安定性に優れ、安定性の順序はEPE>EEPとなった。また、高度不飽和脂肪酸と組み合わせる脂肪酸としては、18 : 1の効果がすぐれており、次いで飽和脂肪酸で、リノール酸はもっとも安定性が悪かった。22 : 6含有トリグリセリドでもほぼ同じ結果が得られた。 ラットを使用したリンパ管からの吸収実験においては、PDPの吸収は速度および吸収率の点で有意にPPDより優れており、トログリセリド中の22 : 6は膵臓リバーゼの加水分解を受けにくく、吸収をよくするためには、高度不飽和脂肪酸は2位に結合することが重要である。また、リンパ液中での22 : 6のグリセロールとの結合位置は投与脂質の形態を大きく反映することが明らかになり、吸収後の代謝にも分子構造が影響することが示唆された。
|