魚介類摂取の意義について機能性成分の立場から検討するため、一般に広く消費されている約50種類の魚介類について、グルタチオン(GSH)、酸化型グルタチオン(GSSG)、総グルタチオン量を測定した。総GSHは魚介肉1グラムあたり約2nmolから約1000nmolときわめて広い分布を示した。GSSGは一部の例外を除きほぼGSHの10%以下であった。また、血合肉中の総GSHは普通肉の約2-3倍を示した。赤身の魚類より、白身の魚類の含量はおおむね少なく、なかでもアンコウのように運動量の低い魚では数nmolしか含まれていなかった。ヒラメなどの低棲魚に比べ、回遊魚中の含量は比較的高く、特にブリやサケでは200nmolを超えていた。すなわち、活性酸素が発生しやすい条件下で棲息する魚介類あるいは部位でGSH含量が高い傾向が認められた。しかし、低棲動物でも貝類の含量は高いものが多く(100nmol以上)、特にホタテでは1000nmolに近い値が得られた。GSH、GSSGともに嫌気条件下の方が空気下より高い貯蔵安定性を示した。空気下では総グルタチオンも減少した。すなわち、空気下におけるGSHの減少はGSSGへの酸化ではなく、このことは機能成分としてグルタチオンを安定的に保持するためにきわめて重要な結果である。今後GSHの減少機構を明らかにする必要がある。また、ホタテガイのGSH含量は非常に高い値を示したが、明確なGSHパーオキシダーゼ活性を認めなかった。ホタテガイにおける活性酸素消去系について解明する必要がある。
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