魚体処理機の導入により、頭部及び内臓などが画一的に切断されるため、かなりの可食部分が残滓として廃棄されるようになった。それらは環境保全の面からも有効利用が望まれる。本研究では、処理残滓からタンパク成分、脂質成分を回収するための基礎的知見を得ることを目的とし、主にマルソウダを対象としてその加工処理残滓の成分分析及び残滓中のタンパク成分を回収するための、自己消化条件の検討を行った。また、得られた自己消化エキスを水産練り製品へ調味料として利用することの可能性についても調べた。 1.残滓の成分分析:残滓の約半分を占める頭部には、窒素成分が15.1%、脂質成分が11.7%含まれていた。また、脂質成分では、残滓各部位の主な脂肪酸はC22:6n-3、C16:0、C18:1n-9、C22:5n-3で、特に生理活性を示すと言われているC22:6n-3の組成比が最も高く、一年を通して20-30%の組成比を示した。 2.自己消化条件の検討:頭部内臓混合物に倍量加水し、pHを調整せず、15°Cで24時間静置して自己消化させることでタンパク質をエキス成分として効率的に回収することが可能であった。また、頭部残滓に多く含まれる脂質の酸化によりエキスの苦味が増すことが明らかとなり、自己消化中にその脂質の酸化を避けるように十分注意する必要があることが示唆された。 3.自己消化エキスの食品への利用可能性の検討:05%化学調味料(95.5%グルタミン酸ナトリウムを含む)を添加したフィシュボールと比較して自己消化エキス(0.5%化学調味料添加と窒素量換算で等量添加)を添加したものは、色がやや濃くなり、匂いも若干強くなるが、旨味が強く、全体的には好まれる傾向にあった。また、このエキスの添加は、カマボコの物性には何ら影響を及ぼさなかった。以上の結果から、自己消化エキススは、調味料として十分利用可能であると判断した。
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