研究課題/領域番号 |
08456111
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
永木 正和 筑波大学, 農林学系, 教授 (90003144)
|
研究分担者 |
石 敏俊 筑波大学, 農林学系, 専任講師 (90282318)
北川 太一 京都府立大学, 農学部, 専任講師 (60224953)
茂野 隆一 筑波大学, 農林学部, 助教授 (60292512)
出村 克彦 北海道大学大学院, 農学研究科, 教授 (70091551)
松原 茂昌 鳥取大学, 農学部, 教授 (70273886)
|
キーワード | 生乳需給調整 / 供給管理 / 生産枠(クォータ) / 市場原理 / 農協 / 地域ブロック |
研究概要 |
(1)西欧で実施されている生乳生産調整の方法を文献レビューした。その仕組みがもたらす個別経営や地域農業への経済的効果功罪を評価し、わが国との背景条件の相違やわが国でクォータ制度を実施する上での課題を整理した。 (2)首都圏飲用乳供給産地に位置する群馬県と遠隔地加工原料乳供給産地の北海道で、計画生産の実施過程、需給調整に関する機関調査、そして経営実態や経営者意向に関する個別経営調査を実施した。本調査から、生産枠売買の当事者間の関係、売買成立要因、売買価格等の実態が明らかになった。特に、インフォーマルな信頼関係、依存関係が重要であることが判明した。これは地縁をベースにするもので、取り引き形態は市場取り引きであっても、実態は、いわば「組織内取り引き」であり、組織内(産地内)での相互依存関係がある産地で生産枠の売買が顕在化しているし、その結果、生産枠が他産地に移動していないことも判明した。さらに、生産枠売買の過渡的な形態として、短期的なリ-ス取り引きがより現実的な流動化の形態であることも判明した。そして、いずれにしても、農協が産地の存立ビジョンを描いて生産枠流動化に主導性を発揮し、取り引きを掘り起こしている産地で流動化が活発であった。ただし、その場合にも農協は当事者間のインフォーマルな関係に立脚していた。 (3)広域需給調整の体制(いわゆる「地域ブロック化」)が先行的に進んでいる北海道と、ブロック化に向けて動きを開始した首都圏でのブロック内需給調整や計画生産枠の配分方法に関する調査を行った。ブロック内の小地域の生産枠流動化調整、次いでブロック内需給調整、全国連再委託方式による段階的、積み上げ的な需給調整の意義、調整主体や既存組織(指定生産者団体、農協)の役割について考察した。農協の組織的な調整機能を高めるための広域ブロック化は正しい方向であるが、全国連再委託が縦割り方式になっていて、全国連段階の調査機能が十分に発揮されていなかった。 (4)地域間需給調整は、地域間の競争均衡に基づくべきであるが、生乳生産が用途縛り、プール乳価性になっている現在の方式を、個別経営段階で用途選択制、用途別契約取り引きへの変更、全国連のボード組織への移行、ブロック間トモ保証の導入、必要に応じてデカップリング政策の導入の必要性を指摘し、その上で組織内取引きの考え方に基づく生産枠流動化の方向を「日本型クォータ制度」として提案し、結論とした。
|