研究概要 |
ハウス内では点滴潅漑、ミスト潅漑、マイクロスプリンクラ潅漑などのいわゆるマイクロ潅漑法が採用されている。潅漑法が異なれば作物の蒸散、土壌の蒸発条件も異なり、結果として水消費量も異なってくる。こうした潅水方法の違いのみでなく、ハウスの被覆材によるエネルギ透過・遮断・反射および換気による微気象の変化などによっても異なってくる。 試験圃場としてビニールハウス内に多孔チューブを配管し大豆の栽培を行った。作物の成長に合わせて,播種期,成長期,繁茂期のエネルギ環境の定量化を行った。床面・葉面に日射計を多数配置し2次元分布を観測した結果,太陽高度が高い正午前後の分布はほぼ均一であったが,太陽高度が低くなる午前,午後には壁面部分に日射量の分布が形成された。実験と平行してハウスにおける短波エネルギの透過・反射・散乱現象を数理化し、床面・葉面への到達エネルギの解析を行った。日射量の分布,時間変化はモデルによって良くシミュレートすることができた。このモデルによって、ハウスの構造、方位、被覆材の素材と到達エネルギの関係について種々計算を行いその影響を明らかにした。以上の短波放射に長波放射を加えた。ハウス圃場の放射収支のメカニズムについても数理モデル化を行った。 ハウス内の気温,湿度,風速,地温,葉温,純放射量,LAI,土壌水分,計器蒸発量等の観測を行い熱収支法,土壌水分減少法,計器蒸発量法,日射量法等の種々の方法で消費水量の定量化を行った。熱収支法を実蒸発散量と見なし,他の方法のハウスへの適用性の検討を行った結果,精度は土壌水分減少法>日射量法>計器蒸発量法となった。 ハウス内における灌漑と土壌水分の移動について解析と実験を行った。対比のために露地についても同様の実験を行った。この結果,ハウスでは降雨が遮断されるので,根群域下層からの毛管上昇水が期待できないことが明らかとなった。
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