研究概要 |
根の機能に関しては,培養液の溶存O_2濃度をO_2欠乏条件からO_2過飽和条件までの広い範囲で長期間制御することが可能な水耕システムを新たに開発した.次に,本装置を用いて溶存O_2濃度を0.01mM,0.10mMおよび0.20mMに制御し,それぞれの条件においてキュウリ植物を10日間生育させて根および地上部の生育に対する溶存O_2濃度の作用を解析した.その結果,根の生育が低溶存O_2濃度において抑制されたのに対し,茎の伸長および葉数増加には溶存O_2濃度の影響は認められなかったにもかかわらず低溶存O_2濃度において各葉の葉面積の増加が抑制されるとともに葉の含水率が低下したことが明らかとなった。植物水プロセスに関しては,まず,トマト植物における果実の肥大生長を転流経路となる茎の伸縮と関連させて解析するために,レーザ変位計を応用した果径および茎径の非接触オンライン計測システムを開発した.次に,果実を切除した小果柄をEDTA溶液に浸し,その切断面から篩部液を採取した後,高速液体クロマトグラフィーで光合成産物(スクロース)の定量分析を試み,24時間継続して篩部液の採取と分析が可能であることを確かめた.光合成産物の転流と貯蔵に関しては,サツマイモ植物個体において葉,塊根および細根の環境をそれぞれ個別に制御する水耕システムを新たに開発し,さらに塊根体積の経時的な計測を可能にした.この水耕システムを用いて,一定の環境条件下でサツマイモ植物を20日間生育させた結果,塊根体積は20日間増加し続けたが,その増加速度は徐々に減少した.また,葉数(ソース能)の異なる材料植物を水耕システムで生育させて塊根の肥大を調べた結果,5枚以上の葉をつけた植物では塊根の肥大速度に差は認められなかったが,それよりも少ない葉数の植物では塊根肥大生長速度が明らかに減少した.これによって塊根肥大がソース能に制限される栽培条件が明らかとなった.
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