研究概要 |
根の機能に関しては,前年度に開発した溶存O_2濃度制御システムにおいてレタス植物の水耕をおこない,培養液の溶存O_2濃度を0.01mM〜0.20mMに制御した条件における根部および地上部の生育に対する溶存O_2濃度の作用を調べた.その結果,レタス植物では著しく低い溶存O_2濃度(0.01mM)において根の生育が抑制されるとともに,根の吸水抑制に起因するとみられる葉の含水率の低下に伴って各葉の伸長すなわち地上部の生育が抑えられることが明らかとなった. トマト植物の果実生長と光合成同化産物の転流に関与する植物水プロセスに関しては,前年度に開発した果実生長と転流フラックスの計測法に加え,果実における蒸散,呼吸,汁液の流入フラックスおよびソース葉における蒸散と光合成のオンライン計測法を開発した.そして,果実に流入する汁液フラックスの約80%が果実の肥大生長に寄与し,果実からの蒸散によって失われる量は汁液フラックスのわずか20%程度であり,果実生長が果実からの蒸散にほとんど影響を受けないことが明らかとなった.また,果実生長と同化産物の転流は光照射によって促進されるが,その際,光照射による葉の活発な蒸散が,植物個体内の水の分配を通して,果実生長に影響することが明らかとなった. 光合成産物の転流と貯蔵に関しては,前年度に開発したサツマイモ塊根肥大の非接触オンライン計測法を用いて塊根肥大速度の日変化を調べた.その結果,塊根生長速度が明期よりも暗期で著しく大となることが明らかになるとともに,地上部への光照射の直後に,植物個体レベルの水分状態の変動に起因すると考えられる塊根生長速度の一時的な減少が認められた.
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