ウシ初乳中に、マウス線維芽細胞LMの増殖を抑制するペプチド性物質が含まれていることを申請者は報告している。しかし、その生物作用については全く明らかにされていない。そこで、LM細胞を用いて、細胞増殖抑制機構を行った。 1.トリパンブルー及びエリスロイシンBを用いた色素排除法によって、生細胞数と死細胞数を計数した結果、細胞増殖抑制因子の濃度依存性に生細胞数が減少した。死細胞数は、各濃度で殆ど差がなかった。生細胞数が減少したのに対し死細胞数は差がなかったので、各点における生細胞/死細胞の割合を見たところ、増殖抑制因子の濃度依存性に死細胞の割合が増加し、最も高濃度の100μg protein/ml添加区では、処理3日目に死細胞の割合が90%にまで達した。このことから、この細胞増殖抑制効果は、細胞死誘導によるものである可能性が考えられる。 2.この画分処理後の細胞の形態について、それぞれ、位相差顕微鏡による生細胞の観察およびヘマトキシリン染色した細胞の観察を行った。その結果、処理により生細胞の形態が変化し、核の凝縮が認められた。さらに、処理した細胞のDNAを抽出しアガロース電気泳動により解析したところ、DNAの断片化が観察された。 以上の結果から、この因子はLM細胞の細胞死を誘導しその作用はアポトーシスによるものであることが明らかになった。今後は、アポトーシスを引き起こすメカニズムの検討と、細胞増殖抑制因子の精製をさらに進め、アミノ酸配列の決定を行う予定である。
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