本年度は無細胞系でPrPCからPrPScへの転換系作出の可能性を探った。 1)正常羊及びマウス脳を用いて未変性PrPCの部分精製法を検討した。脳乳剤より粗細胞膜画分を調整、Zwittergentによるこの画分の溶解、可溶性部分のキレートカラムによる分画、透析後のキレートカラムによる濃縮が収率が一番よかったが、精製度は低かった。イオン交換クロマト等を組み合わせると精製度は上がったが、一操作をするだけで吸着・変性のため回収率が20%前後と低く、結果として、精製物が得られずこれまで効率の好い精製法は完成していない。変性条件を前提としてPrPCを精製するのであれば、大腸菌に発現させたものを使用する方が効率がよいため、現在、成熟PrPC全体及びPrPコアの領域を組み込んだ発現ベクターを作成している段階である。PrPCの糖鎖のビオチン化も検討したが、操作の段階で器壁に吸着し、ビオチン化された蛋白が凝集することが明かとなったため、ビオチン化の方法で標識することを中止した。 2)PrPCからPrPScへの転換のためには鋳型としてPrPScが必要とされる。効率好く反応を進めるために、PrPScを固相化する必要があり、プラスチック壁に吸着させる条件を検討した。精製PrPScをpH8.9の低イオン強度の緩衝液中で分散させ、プラスチックチューブに加えた後にを中性に戻し食塩濃度を0.15Mに調整すると、かなりのPrPScが強固に吸着することが判った。
|