研究概要 |
1、 神経病原性に関する制御機構をウイルス側から検討するために、マウスに対して弱毒のRC-HL株を哺乳マウスの脳で継代し、成熟マウスに病原性を示す病原復帰株の作出を試みた。継代3代目より、成熟マウスに立毛、体重減少及び四肢の振せんなどの症状を発現する株が認められたが、いずれのマウスも耐過し弊死するものはなかった。その後継代に伴ってマウスでの症状はやや増強されたが22代の継代までで強毒株と同様な病原性を示すものはなかった。(Vaccine,発表予定) 2、 同一株由来でマウスに対して強毒の西ヶ原株、弱毒のRC-HL株および病原性の一部復帰株の構造蛋白をコードする各遺伝子の塩基及び推定アミノ酸配列を比較したところ、西ヶ原株とRC-HL株との間で変異した塩基あるいはアミノ酸のうち、病原復帰株で西ヶ原株のそれらに戻っているものは認められなかった。しかし、弱毒のRC-HL株と一部病原復帰株との間ではGおよびM蛋白でそれぞれ一ヵ所ずつ、458と333番目のアミノ酸が変化していた。また、M遺伝子の3′末端非コード領域の724番目の塩基置換が認められた。したがって、これらの変異のすべてあるいは一部がマウスでの病原性に関与している可能性が示された。(Microbiol. immunol.,1994. Virus Genes,1994 Arch.Virol.,1995.) 3、 病原性に密接な関係にある感染防御機構及びその遺伝子領域をモノクローナル抗体並びに遺伝子の発現を用いて調べた。(Biologicals,1996.Microbiol.Immunol.,Clin.Diag.Lab.Immunol.,1997.Virus Res.,1997 Microbiol.Imunol.,発表予定) 4、 狂犬病ウイルスの病原性に密接に関わっている細胞融合能に関与する糖蛋白質のアミノ酸部位を、中和及び細胞融合活性を持つ抗糖蛋白質MAbに対する中和耐性変異株から検討したところ、糖蛋白質35番目のシステインの関与が示唆された。(VirusRes.,発表予定) 4、 狂犬病ウイルスの病原性を宿主側から追求するために、感染培養神経細胞の膜電位をホールセルパッチクランプ法で調べた。その結果、Na電流が小さくなり、細胞の機能障害を起こすメカニズムを解明する手がかりが得られた。(J.Comp.Neurol.,1996.British J.Pharmacol.,1999.)
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