歩行運動において、頚筋、前肢筋、体幹筋、後肢筋、尾筋は、それぞれ脊髄内に存在するcentral pattern generator(CPG)によって駆動されていることが明らかにされているが、これらのCPG間には、階層構造が存在するか否かは不明である。そこで、この階層構造の有無を明らかにすることを実験目的とした。 人工呼吸下で、33頭の高位脊髄猫の、板状筋(頚筋)、上腕二頭筋・上腕三頭筋(前肢筋)、最長筋(体幹筋)、大腿二頭筋・腓腹筋(後肢筋)、外背側仙尾筋(尾筋)の各神経を分離後、ニアラマイドおよびL-DOPAを投与して、central pattern generatorを駆動させた。各筋のニューログラムに律動性放電の認められた20頭のうち、10頭の猫において、複数の部位の脊髄分断を行い、それぞれのニューログラムの変化を調べた。 1) CPGの駆動順位は、後肢、前肢、頚部、体幹と尾部の順であった。 2) 尾端の機械刺激により、すべてのニューログラムに促通効果が認められた。 3) 頚筋のニューログラムは、C4-5頚髄切断後、ほとんどが消失した。 4) 前肢筋のニューログラムは、T7-8胸髄切断後、ほとんどが消失した。 5) T7-8胸髄切断後、体幹筋神経のニューログラムに律動性放電の出現した例があった。 6) 尾筋のニューログラムは、脊髄切断の影響を受けなかった。 7) 各部位のCPGには、階層構造が存在し、後肢筋のCPGがもっとも独立性が高く、前肢筋のCPGは、後肢筋のCPGから抑制性効果を受けていること、および頚筋のCPGは、頚筋より尾側に存在するCPGから促通性効果を受けていることが明らかとなった。
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