薬物投与により、脊髄ネコの脊髄内に存在するcentral pattern generator(CPG)を駆動し、頚筋、前肢筋、体幹筋、後肢筋、尾筋に走る末梢神経を分離して、それぞれのニューログラムを記録し、次いで、脊髄切断により、各部位のCPG間の階層構造を調べた。その結果、後肢筋のCPGがもっとも独立性が高く、前肢筋のCPGは後肢筋のCPGから抑制効果を受けていること、および頚筋のCPGは、頚筋より尾側に存在するCPGから側通性効果を受けていることが明らかとなった。 除脳ネコを用いて、中脳に存在するmidbrain locomotor region (MLR)を電気刺激してCPGを駆動させた。CPGの律動性放電活動を、頚筋、体幹筋、後肢筋に走る筋神経からニューログラムとして記録した。その結果、MLRの電気刺激によって頚筋と体幹筋の筋神経からも律動性放電の記録されることを始めて明らかにした。MLR電気刺激によって筋神経に律動性放電活動が出現する割合は筋神経によって異なり、後肢筋の神経の出現律が頚筋と体幹筋のそれらよりも高く、脊髄内に存在するCPGは、その存在する部位によって出現率が異なること、すなわち、階層構造をなしていることを明らかにすることができた。さらに、腰最長筋を支配する筋神経を第一腰髄、第三腰髄、第五腰髄から分離して、MLR電気刺激時の各筋神経からの律動性放電の出現率を調べたところ、第一腰髄神経における出現率がもっとも高く、第五腰髄神経殻には律動性放電が出現しなかった。この事実は、ひとつの筋を動かすCPGのなかにおいても階層構造が組み込まれている可能性を示唆した。
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