牛胚と単為生殖卵の1/2分離卵を集合してキメリック胚盤胞胚を作り出した。胚はホルスタイン種由来母細胞を体外成熟したのち、黒毛和種精液で受精後発生培養させ、PCRにより雄と性別した胚を実験に供した.単為生殖卵は褐毛和種由来の卵母細胞を成熟させたのち、7%エタノールとサイトカラシンDの5μg/mlにより処置して活性化した.単為生殖卵が8細胞期に達したとき、その1/2を取り出したのち、8細胞期胚の1/2を挿入して集合した。これらの集合胚をそのまま、または1.0%と1.2%の寒天ゲルのシリンダー内に収めて培養し、その集合率を調べた。その結果1.0%または1.2%寒天ゲル内に収めた例と寒天内に収めない例では、前者で有意(P<0.01)に高かった(39/42.93%;36/38.95%と27/51、53%).しかし、胚盤胞胚への発生率には差異が認められなかった(36/39、92%;32/36、89%と23/27、85%). 1.0%の寒天ゲル内に収めたキメリック胚盤胞胚を3頭の受胚牛に移植した実験では2頭が受胎し、40日の超音波による鑑定で妊娠が確認された。しかし妊娠した2頭中1頭では妊娠60日までに胎子が子宮から消失した.他の1頭は妊娠234日目に雄の双子を分娩したが、生後直死であった。これらの子牛の血液について核型分析したところ、いずれもXXとXYの両方の染色体を持ち合わせていた。また、体毛は胚由来の黒色と脚部に単為生殖細胞由来の褐色を呈していた。このことから得られた産子は胚と単為生殖卵由来の両者の細胞を持つキメラ牛であることが判明した.その後同様な実験で作出したキメリック胚を受胚牛へ移植した実験では1頭が妊娠60日齢で流産、他の1頭は270日目の早産であった.後者は残念ながら生後48時間目に死亡したが、明瞭な単為生殖細胞の褐毛が身体全体の20%を占めていた.核型分析をしたところ、いずれもXXとXYの両者を持ち合わせていた.
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