平成8年度に行った成果としてホルスタイン種受精胚と褐毛和種単為生殖卵とが体外で8細胞期に達したとき、両者を透明帯から取り出して集合し、キメリック胚を作出した。これを受胚牛に移植して3頭の子牛を分娩させたが、1頭は双子の早産、他の1頭も早産であり、いずれも死亡した。その後平成9年の始めから食肉処理場より得た牛卵母細胞を研究室まで持ち帰り、褐毛和種卵母細胞を20時間成熟培養したのち褐毛のリムジン種精液で受精した。一方同時期に採取したホルスタイン種卵母細胞を20時間成熟培養したのち7%エタノールで10分間活性化させサイトカラシンDの5ug/mlにより単為生殖処置した。これらの卵が48時間培養後に8細胞期に達したとき、両者の透明帯を除去後集合してキメリック胚を作出し、これを3頭の受胚牛に移植した。その結果3頭が受胎したが、このうち1頭は50日を過ぎて流産した。他の2頭は現在妊娠中であり1月18日と2月20日が分娩予定日である。これまでの例と違って既に妊娠後270日を過ぎており、正常な産子の生まれる確立は高いと思われる。 分娩を待って表皮の色から単為生殖細胞と受精細胞の占める割合、血液型分析や染色体分析による詳細な検討、マイクロサテライトDNAのゲノタイプと赤血球細胞のタイピングで親の詳細な分析を行う。
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