白黒のホルスタインの卵子を黒毛和種精子で体外受精させた。一方、同時期に褐毛和種から得た卵子を7%のエタノールで活性化させたのち、5mg/ml加サイトカラシンB処理により処女発生させた。 次いで、これらの両者の細胞が8細胞期に達したとき微細刃(マイクロブレイド)により卵子の透明帯を切断したのち、両者を集合して更に5-6日間体外で培養した。なお、受精胚由来のプラストメアーの2-3個を取り出し、PCRで増幅したのち、雄(XY)と判定されたものを用いた。 得られた胚盤胞を借り腹牛の子宮角へ移植した結果3頭が妊娠したが、1頭は60日後に流産、分娩した子牛は4頭で、このうち双子が2組である。生まれた双子の牛胎児は妊娠期間が289日を経過した時点で、いずれも帝王切開により子牛を取り出したしたが、4頭の血液検査の結果いずれも単為生殖細胞は発現しなかった。 これまで分娩後斃死した胎子雄2頭の各組織、器官や血液からは、いずれも受精細胞のXYと処女発生細胞由来のXXの染色体が分析された。また、2頭では足首の褐色が処女発生細胞由来のものであることが確認できた。剖検の結果、臍帯鞘は正常の大きさの2倍も巨大化していた。また胎児の胎盤結節数が計53個であり、通常のものよりも10-20個少なかった。これは胎児の胎盤機能が貧弱であったことを示唆している。妊娠期間が261日で20日間の早産であったキメラクローンは体重が36キロの雄で外見的には正常な形態をしており正常な呼吸がみられたが、起立不能後48時間後の弊死した。この子牛について各組織、器官や血液の染色体を分析したところ、受精細胞由来のXYと処女発生細胞由来のXXの両者を持ち合わせていた。また体毛も受精細胞のホルスタインの黒毛と処女発生細胞由来の褐毛とが明瞭に確認できた。褐毛部分の占める割合は身体全体の20%弱であった.剖検の結果臍帯鞘は通常の大きさに比べて2倍も大きく、心臓の腫大、腸管の出血などがみられた。また、胎児胎盤結節数は50個で正常の60から80個よりも少なかった。これらの異常性が早産の原因になったのかもしれない。 これらの生まれたクローンキメラを遺伝的に解析した結集、処女発生細胞と受精細胞を持つキメラであることが実証された。
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