研究課題/領域番号 |
08456162
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
佐久間 貞重 大阪府立大学, 農学部, 教授 (20231334)
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研究分担者 |
代田 欣二 麻布大学, 獣医学部, 助教授 (70147974)
岡田 利也 大阪府立大学, 農学部, 助手 (00169111)
山手 丈至 大阪府立大学, 農学部, 講師 (50150115)
大橋 文人 大阪府立大学, 農学部, 助教授 (10126013)
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キーワード | シスプラチン誘発腎線維化モデル / ラット / サイトカイン / アポトーシス / 細胞外基質 / マクロファージ / 筋線維芽細胞 |
研究概要 |
腎線維化は糸球体あるいは尿細管上皮の傷害の結果として生じ、進行すれば萎縮腎に至る。この病態は、浸潤したマクロファージから放出される種々のサイトカインが筋線維芽細胞による細胞外基質の産生を促し、線維化を導くとされる。しかし、その発生機序は未だ明らかにされてない。本研究課題において、シスプラチン(CDDP)誘発ラット腎線維化モデルを作出して、線維化の病理発生機序について検討した。 1。CDDPの高用量(6mg/kg)をF344ラットの腹腔内に単回投与することにより、急性の尿細管傷害後の腎線維化モデルを作出した。このモデルでは尿細管障害は、初期においては、核変性として現れ、のち上皮は脱落し、一部の細胞はアポトーシスを示した。この変化は投与3-5日後ピークとなり、同時にマクロファージが増数した。 2。投与後5-7日において、マクロファージ数は減少したが、傷害された上皮は再生し始め、BrdU陽性細胞が増加した。これは上皮細胞の再生活性を示している。また、同時に再生尿細管周囲に筋線維芽細胞が増生し始め、投与後28日まで線維化が徐々に進行した。 3。また、尿細管の再生に伴い、一部の尿細管上皮とマクロファージはTGF-βに対し免疫染色陽性となった。アドリアマイシンあるいはピューロマイシンによる糸球体傷害後の線維化モデルにおいては、浸潤したマクロファージから産生されるTGF-βがメサンギウム細胞からの細胞外基質の産生を促し線維化を誘導すると言われている。CDDP誘発腎病変における線維化においても、TGF-βが線維化に係わることが示された。 4。CDDPによるこの腎線維化モデルにおいて、細胞外基質として主としてコラーゲンのI型とフィブロネクチンが増加することが示された。 5。現在、F344ラットの腹腔内にCDDPの低用量(2mg/kg)を反復投与することにより、慢性の尿細管傷害後の進行性の腎線維化モデルの作出を試みている。このモデルにおいても、(1)マクロファージから放出される線維化に係わるサイトカインを同定する。(2)線維形成過程における筋線維芽細胞から産生される細胞外基質の解析とアポトーシスの役割を追求する予定である。(3)さらに、マクロファージの誘導に係わるMCP-1や細胞傷害に関与するNOの産生についても検討する。 6。また、尿管結紮後のラット腎線維化モデルについても、同様の解析を行う予定である。
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