研究概要 |
1. erb B1およびerb B2発現の検出のためのプライマーデザイン. erbB1ではヒト,マウスおよびラットの,また,erb B2ではヒト,ハムスターおよびラットについて報告されているcDNAの塩基配列を比較の上,細胞外領域にあり各動物間で完全に一致する配列を選んで,それぞれ20merのsenseおよびantisenseプライマーを合成した. 2.ネコ乳癌由来培養細胞におけるerb B1, erb B2の発現の検討 3株のネコ乳癌細胞株のいずれにおいても,erb B1の強い発現がRT-PCR法により観察された.増幅されたバンドをクローニングして,塩基配列を調べたところ,全長は他の動物と同じ380bpで,相同性は塩基配列で80%以上,アミノ酸配列では90%以上であった,このプライマーにより,ネコerb B1のmRNAの発現を確認できることが明らかとなった.一方,erb B2の発現は,すべての株で,ほとんど観察されなかった. 3.c-kitプライマーによる増幅産物の確認 c-kitの細胞外ドメインから膜貫通領域を経て細胞内のチロシンキナーゼドメインの一部を含む部分の増幅を行うために,この領域中でヒト,ラットおよびマウスにおいて相同性を有する配列を選んで,プライマーを合成した.イヌ脾臓由来のRNAより増幅されたRT-PCR産物の塩基配列の解析より,同プライマーの有用性を確認した. 4.イヌ腫瘍組織におけるc-kitの発現の検討 イヌの肥満細胞腫6例および肺腫瘍,乳腺腫瘍,悪性リンパ腫等を含む各種腫瘍17例について,その摘出組織を用いて前述のプライマーによるc-kitの発現を検討した.その結果,肥満細胞腫の全症例を含む14例において,c-kitの発現が認められ,その発現率は82.4%であった。このことから,c-kitは様々な腫瘍において発現している可能性が示された.
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