研究概要 |
1)臨床材料からのメッセージャーRNA(mRNA)抽出法の検討. RNAは一般的に生体材料の中で最も不安定な高分子であり,その中でもmRNAは,どこにでも存在するRNaseによって速やかに分解されやすい.RT-PCR法の出発材料として用いる腫瘍の摘出標本中に大量の壊死組織の混入があると種々の問題を生じることが明らかとなった.腫瘍標本を生理食塩水中で,細切し壊死組織を洗い落とすことにより,mRNAの分解もなく,非特異的な増幅も少ない良好な成績を得た.また,摘出材料は氷温の生理食塩水中で,数時間の保管が可能であることが明らかとなった. 2)種々の腫瘍関連遺伝子のRT-PCR法による増幅条件の検討. 種々の腫瘍関連遺伝子のRT-PCR法による増幅条件を決定した.既に,増幅条件を決定しているprohibitin,c-kit,erbB1及びerbB2に加えて,erbB3(及びerbB4のそれを決定した.この条件により,3種類のネコ乳癌細胞株よりRT-PCRによってerbB3(644bp)及びerbB4cDNA(416bp)の一部をクローニングすることができた.ヒトerbB3およびerbB4に対する相同性は約90%であった.また,それぞれの乳癌細胞株においてerbBファミリーの発現パターンが異なることがわかった.用いたネコ乳腺腫瘍の臨床材料のうち,悪性度の高い高浸潤型FMT-3でゃ,erbBファミリー4種類すべてが発現していたことから,その発現パターンが腫瘍の悪性度に何らかの関連があることが示唆された. 3)イヌ乳腺腫瘍におけるc-kit発現の組織型依存性. RT-PCR法により,イヌ乳腺腫瘍におけるc-kitの発現を検討した結果,腺癌において,肥満細胞腫瘍に匹敵する量の発現が観察された.これに対して,悪性混合腫瘍ではc-kitの発現の有意な低下が観察された.
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