研究概要 |
伴侶動物の乳腺腫瘍診断におけるRT-PCR法の有用性を検討するために、乳癌関連遺伝子と言われるerbBファミリー(B1、B2、B3およびB4)、c-kitおよびプロヒビチンのmRNAの発現について調べた。全てのネコ乳腺腺癌(3例)でerbB2およびerbB3mRNAの発現が認められ、一方,プロヒビチンmRNAは全例で発現がなかった。また、このうち1例では全てのerbBファミリーが発現していたが、c-kitの発現は検出されなかった。他の2例ではc-kitmRNAの発現が観察された。 イヌ乳腺腫瘍(11症例)においては、特に腺癌で高頻度のc-kit遺伝子の発現が観察された。また,その他の腫瘍について検討した結果、肥満細胞腫以外では発現が少なく、その乳腺腫瘍マーカーとしての高い有用性を示唆する。イヌerbB1、B2、B3およびB4mRNAの発現は、正常乳腺ではいずれも認められず、腺癌3例中でそれぞれ3例、2例、3例および3例、悪性混合腫瘍8例中でそれぞれ7例、5例、6例および7例であり、良性混合腫瘍1例ではすべての遺伝子の発現が見られた。ネコの場合と異なり、正常組織、乳腺腫瘍および悪性リンパ腫、膀胱癌などの他臓器腫瘍(11症例)のすべてにおいてプロヒビチン遺伝子の発現が認められた。以上の結果より、調べた6種の遺伝子の発現の有無は、伴侶動物の乳腺腫瘍マーカーとして有用であると考えられる。 ネコ乳腺腫瘍培養細胞株FMT-3にはそれぞれ染色体D1およびE1の、またFMT-4にはF2の一方まはた完全欠失が見られ、これらを含むマーカー染色体が存在した。両株には高頻度のB4トリソミーが共通して認められた。新たに作成したゲノムプローブを用いたFISH法によりネコプロヒビチン遺伝子のB4上の局在を確定した。FMT-3に見られた3本のB4のうち2本にプロヒビチン遺伝子のFISHシグナルが確認された。
|