先にHIv/SIVレセプターとしてのサルCD4分子を解析するため、各種サルCD4遺伝子をクローニングし、哺乳動物細胞でのStableな各種サルCD4発現形質転換細胞を樹立し、invitro感染系におけるHIV-1に対する感受性とCD4分子構造の関連について解析した。そこで全てのマカク属サルCD4発現HeLa細胆で感染成立を認めたが、Syncytium形成はヒト・アフリカミドリ、アカゲおよびニホンザルCD4発現細胞のみで観察されたことから、ウイルスの侵入・感染成立とSyncytlum形成機序は異なる過程を含むことが推測された。このSyncytium形成Phenotypeの違いはサルCD4分子間のアミノ酸構成の相違から考察すると、Domaln2からDomain4における数個のアミノ酸の違いに因るものと考えられた。そこでこのSyncytium形成Phenotypeの相違がどのCD4 Domain構造の差に因るものか、Phenotypeの異なるサルCD4遺伝子間のChlmera CD4を作製して解析した。その結果、Syncytium形成はPhenotype陽性サルCD4分子のDomain2と連関していることが判明し、Syncytium陰性カニクイザルCD4 Domain2のアミノ末端144位のLeucineを陽性ニホンザルのIsoleucineに部位特異的変異によって変えることにより、Phenotypeの変換が可能であることが示された。このことからウイルスの効率的な感受性細胞へのEntryおよび融合過程には、HIV-1 gp120分子がレセプターであるCD4分子のDomain1のみならずDomain2のIsoleucine残基近傍の部位とも相互作用していることが示唆された。この第2の結合部位がHIVの感染過程に如何なる影響を及ぼすかさらに検討を要するが、ヒトCD4分子そのものはgp120分子の様に変異をしないので、新たなウイルス増殖抑制戦略の標的となる可能性が期待された。
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