オウレン細胞より単離した3種のO-メチル化酵素cDNAならびにオウレン細胞においてもっとも高いプロモーター活性を示したエンハンサー配列を重複して持つカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターを用いて構築した植物細胞用高発現ベクターをイソキノリンアルカロイド生産細胞であるオウレン細胞に導入する条件を検討した。昨年度まで検討していたパーティクルガン法による遺伝子導入では形質転換体が得られなかったことより、再度、Tiベクター/Agrobacteriumシステムを用いたオウレン細胞の形質転換を試みた。まず、選抜に用いる抗生物質の検討を行ない、カナマイシンでは150μg/mlでもかなりの生育が見られること、ハイグロマイシンやビアラホスのほうがより効果的選抜が可能であることを認めた。そこで、ハイグロマイシン抵抗性遺伝子を選抜マーカーとし、GUS遺伝子の発現を指標にオウレン細胞へのAgrobacteriumを用いた形質導入条件の検討を行った。培養12日目の培養細胞に感染前処理として超音波処理を行ない、LB培地に懸濁したAgrobacteriumを感染させ、約1カ月の選抜培養を行なった結果、いくつかのコロニーにおいてGUSの活性を認めた。しかし、これらGUS活性を示すコロニーの出現頻度は極めて低く、さらに感染条件の検討を要すると考えられる。 なお、タバコ葉を用い、Agrobacteriumを重複感染させることにより複数の遺伝子を同時に導入する可能性についても検討している。すでに、いくつかの形質転換体を得ており、解析をすすめている。もし、同時に感染することにより複数の遺伝子を導入することが可能であれば、オウレン細胞を用いた感染も試みる。
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