Alcaligenes faecalisのインドール酢酸(IAA)合成に関わる(インドールアセトニトリルからIAAへの加水分解反応を触媒する酵素)ニトリラーゼの発現調節機構を解析した。既にクローン化している本菌のニトラーゼ遺伝子nitAを含む種々のデリーションクローンのニトリラーゼ活性を測定した結果、nitAの上流約0.3kb、下流約1.5kbの領域がイソバレロニトリルによるニトラーゼの誘導発現に必要であることが判明した。本領域には、一つのORF(nitR)が存在し、nitRから予想されるアミノ酸配列は、Pseudomonas putidaのキシレン代謝系遺伝子の誘導発現を正に調節するXylSおよび大腸菌のアラビノース代謝系遺伝子の誘導発現を調節するAraCと、特にタンパク質のC末端部分において相同性を示した。XylSやAraCは相同性のあまり高くないN末端部分でそれぞれのインデューサーとなる化合物を認識し、相同性の高いC末端部分に存在するhelix-turn-helixモチーフの領域で特定のDNA配列と結合して、転写を調節すると考えられている。一方、nitAをlacプロモーターの下流に連結し大腸菌で発現させた場合、nitRが存在しなくてもIPTGによりニトリラーゼが活性の有る状態で大量に発現したことから、上記の結果も考え併せると、NitRタンパク質はnitAの発現を転写レベルで正に調節するタンパク質であることが示唆された。このように、ニトリラーゼの発現調節機構モデルを提示することができた。
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