研究概要 |
本年度は、2つの観点から研究を行った。1つはセサミンの脂肪酸代謝への影響を与える機構の解明のために、セサミンの生体内での代謝について検討した。本研究に用いているセサミンはセサミンとエピセサミンの等量混合物であるために、それぞれの同時定量法を行うために、HPLC法での定量法を確立した。そして、両セサミンを経口的に8週間連続投与した時の肝臓内でのセサミンの動態及び胃内に1回投与したセサミンの吸収をリンパカニュレーション法で調べると共に、1回投与後の各種臓器内でのセサミンの動態を経時的に検討した。その結果、吸収時にはセサミン、エピセサミン共に同様に吸収されるが、肝臓内ではエピセサミンに比べてセサミンの代謝がより速いことが示され、両セサミン共に24時間内に速やかに代謝されることが明らかになった。この結果より、セサミンの脂肪酸代謝への生理作用はセサミンの代謝物が行っている可能性が高いことが示唆された。次に、n-6系のアラキドン酸投与時におけるセサミンの効果についても検討を加えた。アラキドン酸(AA)を飼料中40%含むような高AA食をラットに投与すると、AAによる過剰の害が観察されたが、同時にセサミンを投与することで、このような害は防がれることが認められた。また、先に行ったn-6系の20:5(EPA)投与ではセサミンがEPA過剰投与によるn-6/n-3比の低下を改善したが、AA投与に際しても、AAの過剰摂取によるn-6/n-3比の大きな上昇を抑制した。これらの結果はセサミンが食事由来の必須脂肪酸、特にn-6、n-3両系列脂肪酸の代謝を調節し、生体が本来もっている適正なn-6/n-6比を保たせるように働くことが確認され、その機構は主にセサミンの代謝物が担っているものと推測された。これらの結果は本年の日本農芸化学会大会(4月,東京)で発表の予定である。
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