本研究は、必須脂肪酸の内、n-6系列のアラキドン酸(AA)、n-3系列のエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の代謝に対して、同時にゴマのリグナン化合物の1つであるセサミンとエピセサミンを等量投与することで、どのような代謝の調節作用が起き、その際のゴマリグナンの作用機構を解明することを目的とするものである。そのために、1).生体試料についてセサミンとエピセサミンの同時定量法を確立し、それらの体内動態を測定すること。2).AAまたはEPAを動物に投与した時に起きる代謝変動に対して、セサミンやエピセサミンがどのような影響を与えるか検討すること。3).DHA投与時の代謝変動へのセサミンの効果などを検討した。最初の検討項目であるセサミンとエピセサミンの代謝については、これらの化合物は容易に吸収されるが、24時間以内に、血液や臓器中から急速に消失することから、セサミンの必須脂肪酸代謝への効果は、それらの代謝物によることが判明した。また、エピセサミンよりも、セサミンの代謝がより速いことも確認された。次に、AAとEPA投与により、生体内の脂肪酸組成は大きく影響されることが明確にされた。特に、AAの大量投与により、肝臓はかなり強い影響を受け、正常状態でなくなるが、セサミンはこのような代謝変動を正常化し、各組織でのAA濃度を低下させる。同様に、EPA投与でも、急激な臓器でのEPA濃度の上昇をもたらすが、セサミンはこのような変動に対しても、生体の恒常性を保つように機能し、本来その動物がもっている正常範囲内にEPA濃度を維持するように機能した。従って、セサミンは両系列の必須脂肪酸の代謝を調節するように機能した。
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