研究概要 |
嗅細胞の神経成長因子(NGF)依存性について検討した研究成果を以下に報告する。 1.NGFに特異的な受容体が嗅上皮に発現しているかを免疫組織学的に調べた結果,高親和性受容体(trkA)については,正常嗅上皮ではわずかに発現していた。嗅神経切断後の嗅上皮においては発現の増加が認められた。低親和性受容体(P75)については,正常嗅上皮ではほとんど発現が認められなかったが,嗅神経切断によって発現した。 2.嗅細胞の標的組織である嗅球に^<125>I-NGFを注入し,投与されたNGFが標的組織でuptakeされ細胞体領域までtransportされるかをイメージングアナライザーを用いて画像解析した結果,NGFは嗅上皮(嗅細胞)に特異的にtransportされることが明らかになった。嗅細胞のNGFは依存性を強く支持する所見が得られた。 3.嗅細胞のNGF依存性をさらに確めるために,抗NGF抗体を嗅球に持続注入し,NGFの作用を長期間にわたって阻害した結果,嗅細胞の変性(細胞死)を誘発することができた(この実験結果は例数が少なく追試する必要がある)。 これまでの実験結果から,嗅細胞の神経栄養因子としてNGFの関与を支持するデータが集まりつつある。 今後の研究としては以下の点についてin vivo,in vitroで調べていきたいと考えている。 (1)NGFの持続投与によって嗅細胞の細胞死が阻止できるか? (2)NGF以外の神経栄養因子(BDNF,NT-3等)が関与しているか? (3)神経栄養因子の作用を組織培養下(in vitro)に検討する。
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