研究概要 |
四肢奇形ミュータント系メロメリア(meromelia,mem)マウスは、二分爪から種々の肢減形成に至る異常を生じるが、皮膚紋理を指標に手掌・足底の構造を詳細に観察したところ、四肢腹側構造が背側化していることが明らかになった。JF1/mishima系と交配し、遺伝子連鎖解析(linkage analysis)を行ったところ、mem遺伝子は第13染色体の長腕末端近くに位置づけられた。この遺伝子座はEn-1など四肢形態形成にかかわる既知の遺伝子とは無関係であった。四肢奇形ミュータント系ハンマートウ(hammer-tow,Hm)の皮膚紋理観察では、肢腹側の低形成が斜指の基礎にあることが示唆された。トリソミ-16マウスでも掌蹠の皮膚紋理に異常を見いだし、マウスにおいてもヒトと同様に染色体異常と皮膚紋理異常に関連があることが明らかになった。この点をさらに追求するために、Jcl:ICRマウスを材料に、皮膚紋理の発生過程における細胞増殖をブロモデオキシウリジンの取り込みを指標に検索したところ、パッドの隆起が最も急速に進む胎齢15.5日(膣栓発見=0日)には、パッド原基の間葉細胞は他の間葉系に比べてDNA合成が盛んであることが明らかとなった。妊娠12.5日のJcl:ICRマウスにレチノイン酸を投与して、妊娠末期の胎仔を観察すると、指間パッドの過剰や足根パッドの欠如などの異常が誘発された。その病的発生過程を組織学的に検索したところ、欠如と思われた足指パッドにも間葉凝集が認められ、欠如ではなく低形成であることがわかった。この異常と遺伝子発現との関係をEn-1、Dlx-2、Wnt-5a、Wnt-7a、Fgf-4、Fgf-8、Shhなどのプローブを用い、全載インシツハイブリダイゼーション法で検索中である。さらに、ダウン症の責任遺伝子ではないかとされるEts2遺伝子についても、正常および異常発生中の肢芽での発現を検索している。
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