研究概要 |
顕微測光画像解析システムにて,各種伝達物質や薬物が上皮組織の細胞に与える効果を検討した。胃腸管上皮に関して:マウス腸管上皮単離標本の周囲をCCh,ノルアドレナリン(NorAdr),ドーパミン,セロトニン(5-HT),NaFとAlCl_3,コレラトキシン(CTX),thapsigargin,VIP,ATP,Histamineを含むリンゲル液で潅流した。NorAdrを作用させると,陰窩の一部に限局して細胞質内のカルシウムの一過性の上昇が観察され,CChwo与えたときには,陰窩底部のパネト細胞領域に[Ca^<2+>]_iの比較的持続的な上昇が起きた。一方ATPやNaF+AlCl_3を含む液で潅流すると,[Ca_+]_iの上昇が陰窩全体に観察された。CTX,5-HT,ドーパミン,VIP,Histamineでは腸管陰窩上皮の[Ca_+]_i上昇を引き起こすことは出来なかった。ブルンナー腺では[Ca_+]_iの律動的変動が非刺激時にも観察された。 前立腺組織に関して:分離したラット腺終末部標本には,線細胞の他に間質の平滑筋細胞が含まれていた。NorAdrとATPに対して,間質の平滑筋は反応して[Ca_+]_iの持続的上昇を引き起こしたが,腺細胞には著明な変化が見られなかった。α1拮抗物質で,平滑筋の[Ca_+]_iの上昇は抑えられた。 精細管上皮について:ラットの単離精細管標本を作製した。精細管は筋様細胞の収縮によりゆっくりとした波状運動を起こしていたが,[Ca_+]_iの変動は伴っていなかった。潅流液中にATPを投与すると,精細管上皮に持続性の[Ca_+]_i上昇が見られたが,筋様細胞における変化は検証できなかった。細胞外カルシウムを抜いた状態でも,ATPによる精細管上皮の[Ca_+]_i上昇がおきた。 平滑筋に関して:陰茎海綿体筋の分離標本作製を試みたが、コラゲナーゼ消化法では当初の目的を達するに十分な標本が得られなかった。スライス標本の作製を次年度は企画している。 結語:今年度の実験結果より生体内各部でATPが信号物質として働いている可能性が示されたが,高濃度のATPがどこから由来するか今後の検討を要する。
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