研究概要 |
昨年に引続き、顕微測光画像解析システムにて,各種伝達物質や薬物が上皮組織の細胞に与える効果を検討し、更にレーザー顕微鏡による観察もおこなった。また、上皮標本作成中に組織中の細動脈も分離できたので、細動脈における[Ca^<2+>]の変動も観察した。 胃腸管上皮に関して:マウス十二指腸より単離した十二指腸腺腺房標本の[Ca^<2+>]_i変動を観察した。非刺激時に生じる律動的な変動では、細胞内Ca^<2+>波が細胞の分泌果粒領域から生じて細胞の底部に向っていたが、底部から始まる場合もあった。 角膜上皮に関して:ATP(1μM)による[Ca^<2+>]_iの変動は,細胞内カルシウム貯蔵場からの放出による急激な[Ca^<2+>]_iの上昇と,それに引続き生じる細胞外からのCa^<2+>の流入による維持相が観察された。律動的変動は,実は細胞表層あるいは基底層では生じないものの,中間層で同期した振動が生じていることが明らかになった。Gap junctionを抑えるOctanolでもこの律動的変動は抑制されなかった。AdenosineやP2X agonistでは反応が惹起されず,UTPではATPと同様の反応が引き起こされたことから,角膜上皮のATPに対する[Ca^<2+>]_iの反応は,P2Y受容体を介することがわかった。 水晶体上皮細胞:家兎水晶体継代上皮細胞(〜50代)を用いた実験では,ATPを灌流した直後より,角膜上皮と同様の初期相と維持相とからなる2相性の[Ca^<2+>]の変動が認められた。この反応は測定視野の全ての細胞において生じたが,一方adrenaline,noradrenaline,carbacholによる一過性の[Ca^<2+>]_iの上昇は一部の細胞にのみ見られた。また,興味深いことにサブスタンスPそれ自体では,[Ca^<2+>]_iの変動を引き起こさないものの,サブスタンスPを前もって投与しておくと,ATPによる維持相の延長が生じた。この変化は可逆性で,サブスタンスPを,洗い流した後のATP単独投与では,維持相の延長は消失した。 平滑筋に関して:血管の形を維持したままの標本で、血管平滑筋の収縮と細胞内カルシウム濃度の上昇を確かめた。noradrenalineでは局所性の、セロトニンやATP、エンドセリンでは血管全周の反応が引き起こされる事が確かめられた。
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